文化講座

第24回「抽象と想い」 藤原晴彦 氏

2015-09-18

飾る絵画ではなく、絵画の中に命と想いを抽象的に表現したい。

[洋画家]藤原 晴彦 氏

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 平成27年9月18日午後6時30分からサルーテで、第24回『楽しく真剣!「サルーテ文化講座」』が開催されました。司会の角秋勝治氏の講師紹介を経て、洋画家・藤原晴彦氏の講演がスタート。造形ばかり美しいものを追及すれば、限りなく造形を求め、自分自身が疲れてしまう。癒して貰え、自分に戻れ、更に追求できるのが抽象作品。幼少時代からの写真と作品を織り交ぜながら投影、多くの聴講者の前で、熱く・にこやかに抽象絵画の世界についてお話をされました。参加者は60名。

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講師の藤原 晴彦 氏

 私は、若桜町で生まれ、姉が1人います。中学生時代は、バレーボール部に入って、県体まで出場しました、美術は友人と描いていました。
 八頭高校に進学し、美術部に入部。町田先生に指導をして頂きましたが、遊び半分で絵を描いていました。2年生の時、美術部の先輩が東京芸大に入学。全体集会で校長先生から報告があり、私も東京芸大に進学したいと考えました。
 人間国宝になられた陶芸の前田昭博氏とは同級生で一緒にデッサンを描いていました。
 東京芸大を受験しましたが、不合格。
お茶の水美術学院へ通いますが、6月頃から気が緩み、気が付けば秋口。油絵の勉強に精を出しましたが失敗し、若桜へ帰郷しました。
 鳥取市内の印刷会社に就職。4色刷りの輪転機を任せられるまでになりましたが、大学生活への夢が捨てきれず、9月から自室に籠り絵画を描きました。9月から愛知芸大に入学する間、私の人生の中で一番多く作品を描いた時期です。

 画家になりたくて芸大に通ったのではなく、4年間絵画を描きかっただけで、卒業後のことは余り考えていませんでした。大学2年生の時、大学院生が持っていた、白い彫刻レリーフ等、徹底した幾何学的抽象作品のベン・ニコルソン(イギリス)の画集を見てこの世界にのめり込みました。
 卒業し鳥取へ帰郷。鳥取西工業高校(現緑風高校)の非常勤講師をしながら、若桜橋の近くの「定有堂書店」の2階に制作を兼ねた絵画教室を開きました。
 28歳で結婚し、新婚旅行も兼ねて、ヨーロッパ(春)、アメリカの美術館(夏)を巡りました。そこでいろいろな人とふれあい、刺激を受けることができました。帰国後、地元紙に15回連載の紀行文を掲載して頂いた。
 また、帰国後、1ヵ月に1回ギャラリー巡りをしていました。大阪で「人の真似をするな。今までにないものをつくれ」と提唱する「具体美術協会」の創設に参加した元永定正氏に巡り合い、3年間指導を受けることとなります。本当は、「具体美術協会」を創設した吉原治良氏に直接、指導して頂きかったのですが、その時は既に逝去されていました。
 描いた絵画を元永先生に見て貰いますが、誉めて頂けない。一緒に教室に通う生徒の絵画の批評を客観的に聞いて勉強をしました。空間・周り・ゆとりとしゃれた感じ、元永先生は遣りつくされた作品は誉めないと判ってきました。私の絵画も3年経つと変わっていきました。人生で初めて絵画を学ぶことができたと思っています。
 美術評論家に三木多聞氏がおられます。全国から現代絵画の新しい創造を目指す、新鮮な新人を三木先生は1人で発掘したいとの要望に沿ったTAMON賞に応募し、第2回TAMON賞を受賞。
副賞としてニューヨーク研修(6カ月+実費で6カ月)に家族と一緒に赴きました。
 ニューヨークでもいろいろな画廊、美術館巡り、また芸術家との交流があったおかげで経験や見聞を深めることができました。帰国前に日本人が経営しているニューヨークの画廊で個展を開催しました。
 帰国後、受賞したことによって、今以上にいいものを描かないといけないとプレッシャーが重石になったのか10年間満足する作品が描けなくなりました。
 アメリカの抽象表現主義の代表的な作家マーク・ロスコの作品に出合う。「人間を豊かにする道具ではなく、人間が道具だ」と感じ、カルチャーショックを受けました。作品を通してその時の気持ちを訴えたい、絵画の中に命を表現したいと感じ始めました。
 少しでも、神秘的なマーク・ロスコに近づける作家になって行きたい。現在61歳。今も毎回悩みながら創作を続けています。絵画というのは、時代やその時の気持ち、心で表現のしかたが変化する。
 作家としてはまだまだ道半ば。まだ答えは出てこない。これからも研鑽を続けていきます。

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人生で一番多く作品を描いたのは、会社を退職し愛知芸大に合格する間です。これがその当時の作品。

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徹底した幾何学的抽象作品のベン・ニコルソン(イギリス)の画集を見てこの世界にのめり込みました。

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マーク・ロスコの作品を見て「人間を豊かにする道具ではなく、人間が道具だ!」とカルチャーショックを覚えた。

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作品を通して気持ちを訴えたい、絵の中に命を表現したいと感じた。


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少しでも、神秘的な抽象表現作家マーク・ロスコに近づける様に、これからも研鑽を続けて行きます。

■藤原 晴彦 氏のプロフィール

・1954年

・1978年

・1983年

・1987年

・1988年

・1990年

・2000年
八頭郡若桜町生まれ。77年、鳥取画廊で第1回個展。

愛知県立芸術大学(油絵)卒業。82年、欧米に渡り現代美術を視察。

画廊鳥取美術での『三人展』をはじめ、県内外で個展やグループ展を開く。

吉原治良賞美術コンクール店、87年現代美術の祭典に出展。第3回個展、『具体美術』知られる本永定正氏に91年まで師事。

『8人の表現』、現代日本絵画展、『グループでないグループ展』、『国際インパクトアートフェスティバル』に出品。

Be-Art90で準大賞。グループ『AGK展』に出品。91年、第2回TAMON賞全国公募展で大賞受賞、ニューヨークで研修受ける。97年『現代作家の眼展』に出品。

ギャラリーあんどうで第8回個展。04年、第9回個展、川上奨励賞受賞。以後、軽井沢などで個展。

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