文化講座

第10回「いのちのかたち」 石谷孝二 氏

2012-10-23

『斬新!「見立て」の発想』自然や生物を人体に [彫刻家]石谷孝二 氏

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石谷さんは岩手大学在学中に国画会展(国展)に初入選、奈良教育大の研修生として、仏像に深く接しわずか27歳で国画賞。愛知芸大講師を経て、1986(昭和61)年に鳥取大学へ赴任。鳥取で豊かな自然に触れて、ふと湧いてきたのが、『ある物からそれとは別の物を見る「見立て」』の発想。生物や自然を巧みに人体へ取入れた、斬新な「見立て」の造形の講話に、75名の参加者は大きな刺激を受けました。

ことし最後の第10回「サルーテ文化講座」は11月16日、 イベントホールに彫刻家・石谷孝二さんを招き、『いのちのかたち』と題して開かれました。国画会会員で鳥取大学教授の石谷さんは、県内では数少ない彫刻の牽引者。
生物や自然を巧みに人体へ 取入れた、斬新な「見立て」の造形に、満場の市民は大きな刺激を受けました。

石谷さんは1952(昭和27)年、北海道の北見市生まれ。
岩手大学在学中に国画会展(国展)に初入選、以後連続 入選で、奨励賞を受けるなど早くから才覚を発揮。次いで愛知芸大で学びますが、決定的な影響を受けたのは奈良教育大の研修生として、仏像に深く接したことでした。

石谷さんは法隆寺・唐招提寺などの古寺を回想しながら、「普段見られない仏像の背後まで見た」と感動しますが、問題は「自作の仏像は出来ても、少しもありがたくならない」という事実。忘れられないのは、薬師寺で「日光月光菩薩」を見たお年寄りが、ふと漏らした「ああ、値打ちがあるなあ」の一言でした。
どこが違うのか。自分の不甲斐なさ、修業不足に愕然として必死で研鑚します。そして分かったのは「仏像とは単なる形の具象ではなく、抽象性を内包したものであること」。言い換えれば、内側に秘められた「精神性」ということでしょうか。

埼玉でも学び、幾度も挫折しながら鳥取へ赴任しました。そこで豊かな自然に触れて、ふと湧いてきたのが「見立て」の発想です。見立てとはある物からそれとは別の物を見ること。「ダブルイメージ」とも言います。例えばピカソは、自転車のハンドルをくっつけて牡牛を表現。「窓」を見て「眼」を連想するのも、見立ての発想です。
発想はカニ、セミ、トンボなどの形から人体を連想し、合体・融合させて、生き生きとした刺激的な『樹魂』『樹下美人』『湖月』などの代表作が発表されます。視点を変えることで人体になり、素材になるわけです。しかし石谷さんはいま、見立てに拘らず、とにかく「生命感」のあるものをと、新たな制作意欲を燃やして講座を終えました。


■石谷孝二 氏のプロフィール

◎1952(昭和27)年、北海道留辺蘂町(現・北見市)生まれ。71年、岩手大学特設美術科に入学。 在学中の73年、国展に初入選、以後連続。秋季展で奨励賞。77年、愛知県立芸術大学大学院 彫刻専攻科を経て、奈良教育大学研究生になる。

◎1979(昭和54)年、第53回国展で国画会賞を受賞し、会員推挙。80年、奈良の現代作家作品展に招待出品。83年に国展会友優作賞を受賞し、会員に推挙される。翌年、愛知芸大非常勤講師。東京のふれあい彫刻展に出品。

◎1986(昭和61)年、鳥取大学に赴任。ギャラリー栄光舎でテラコッタ・ガラス絵・水彩画・すみ絵の個展、宝林堂ギャラリー・ギャラリーあんどう・ギャラリーそらでグループ展。「仁風閣の樹下美人と題して加彩テラコッタ展。90年、東京芸大で文部省派遣内地研修。93年「見立ての造形」の論 発表。

◎2000(平成12)年、第1回桜の森彫刻コンクールで優秀賞。2004年、大韓民国にブロンズ・モニュメント設置。2007年、郷土作家展出品。2009年、北京林業大学で講演。県文化功労賞のトロフィー制作。県教育表彰、鳥取市文化賞など受賞。

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